舌癖の改善、筋機能療法(MFT)
様々な習癖と不正咬合の発症について
様々な口の周囲の習癖の中でも舌癖が最も有名ですが、これは舌突出癖ともいい、歯並びが開咬状態になると二次的に現れてくることが多く、一般的に後天的なものといえます。
舌癖のある人は、いつも舌が歯を押していて、飲み込むときにさらに強い力で歯を押し出します。
その上、くちびるやほほの筋肉の力が弱い、特にいつも口を開けている人は外側から歯を押さえる力が足りず、これらも歯並びが悪くなる原因となります。
幼児期より指しゃぶりを長く続けると上下の前歯の間に大きな隙間が開き、開咬や上顎前突などの不正咬合を発症します。 更に、このような不正咬合になったために歯の隙間に舌を挟み込んだり、歯を舌で裏側から押すようになり、普通では見られない新たな舌癖が生じてくる場合があります。
その結果、異常嚥下癖や口呼吸をもたらし、不正咬合が増悪することにつながっていきます。 矯正治療によって上下前歯が噛み合うように改善したにもかかわらず、舌癖によって再び上顎前突や開咬を生じてくる場合もあります。その他の習癖(指しゃぶり、爪を噛む癖など)でも、様々な不正咬合が生じます。
健康な咬合育成のための「舌トレーニング」
~口腔筋機能療法(MFT)~
近年、子どもたちの咀嚼力(噛む力)の弱化による口の周りの筋力の低下が指摘されています。これにともない歯列に及ぶ筋圧のバランスが変わり、歯列の幅が狭い、顎の骨の発育が不十分な子どもたちが増加しています。
歯列は、舌・唇・頬などの口の周りの筋肉から常に圧力を受けています。咀嚼(噛む―噛み砕く・すり潰す)、嚥下(飲み込む)、発音、呼吸などの機能が正しくないと歯列に及ぶ筋圧のバランスが崩れ、歯並びや咬み合わせの異常を誘発します。
≪歯並びやかみ合わせ異常を誘発する癖≫
顎(歯列)の健康な発育を阻害する
咬み合わせが悪くなる(咬合異常)
- 食物を咀嚼・嚥下する(噛む・飲み込む)時、唾液を嚥下する(飲み込む)時に、唇や頬など口の周りの筋肉を緊張させて歯列の外側から、また舌で前歯を強く押して歯列の内側から圧をかける癖(舌癖)
- 指しゃぶり、おしゃぶり、爪を噛む
- 唇を舐める、唇を噛む、唇を吸い込む、舌を動かして弄ぶ などの癖
- 態癖
矯正歯科治療と口腔筋機能療法(MFT)の併用
口腔筋機能療法(MFT)とは、歯列に及ぶ筋圧のバランスを整えるためのプログラムであり、このような歯並びに影響のある癖を改善し健康な咬合を育成していくトレーニングです。成長期にトレーニングを行い、バランスの良い筋機能を習得すれば顎の発育を促す事になります。
また、舌癖などを改善することでスムーズに矯正治療が進み、治療後の舌癖による後戻りも防止できるので成人の方にも有効です。
トレーニングの目的
- 舌の筋肉を強くする
- 唇や頬、口の周りの筋肉に力をつける
- 正しい噛み方や飲み込み方を覚える
- トレーニングで覚えた舌の位置や唇の状態を保ち、日常生活の中で正しい飲み込み方を習慣にする
- 指しゃぶり、態癖などの除去
口腔筋機能療法(MFT)の応用範囲
- 幼児・小児の口腔機能の育成、口呼吸の改善(鼻呼吸の獲得)
- 指しゃぶりへの対応
- 噛む訓練、リップトレーニング
- 構音障害
- 舌小帯切除前後の舌のストレッチ
- 唾液分泌促進
- 開咬、すきっ歯の改善 など
口の周りの筋機能が向上し、舌癖が無くなれば、矯正治療の進行もスムーズですし治療後の歯並びを維持するために役立ちます。